1970年代のアメリカ映画の傑作を視聴する機会に恵まれました。主演はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードで、第46回アカデミー賞作品賞を受賞した作品です。この作品は、いわゆる詐欺師が主人公の「ドンデン返しもの」として知られていますが、見る者を巧みに騙すその仕掛けには、作り手の深い洞察が反映されています。脚本が非常に優れており、無駄なシーンがないため、物語の展開が緻密かつ滑らかです。40年以上の歳月を経た今でも、この作品には根源的な映画の魅力が息づいており、まさに傑作と言えるでしょう。
作品紹介・キャスト
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
1973年に製作されたアメリカ映画を紹介します。大恐慌の時代を背景に、2人の詐欺師であるフッカーとルーサーが路上で無知な人々を騙し、生活費を稼ぐ日々を描いています。ある日、偶然にもギャングの手下をだまそうとしたフッカーたちは、復讐を受けることになります。生き残ったフッカーは、ルーサーの仇を討つとともに、自身の命を守るため、さらに大胆な詐欺を企てます。追跡する殺し屋、腐敗した警察官、そして謎の男など、様々な登場人物が絡む中で、フッカーの運命はどのように転がっていくのでしょうか。この作品は、大恐慌下での生活苦に翻弄される人々の姿を、巧みな詐欺師の視点から描いた作品となっています。
出演:ジョニー・フッカー(ロバート・レッドフォード)ヘンリー・ゴンドーフ(ポール・ニューマン)ドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)スナイダー刑事(チャールズ・ダーニング)ほか
映画「スティング」感想&解説
映画を見ると、この複雑なストーリーが意外にもシンプルだと感じられるでしょう。しかし、ほとんどすべてのシーンに深い意味が込められており、登場人物の表情やセリフが巧みにミスリードを含んでいます。観客は、キャラクター同士の欺瞞の応酬や、フッカーとゴンドルフの策略によってロネガンが上手く騙されていく過程を、あたかも全知の立場から見ているつもりになっています。しかし、この映画の主眼は、まさにそのような観客を最終的に欺くことにあるのです。
この映画は、観客を詐欺師の共犯者のように感じさせます。通常、「コンゲーム(詐欺師)映画」の魅力は、観客が作戦や騙しの手口に興味を持ち、キャラクターの行く末を見守ることにあります。しかし、この作品では、提示される情報が巧みにコントロールされているため、最後のオチで観客は見事に騙されてしまいます。しかも、それがきわめてフェアな方法であるため、違和感を感じることはありません。これは、この映画の脚本の素晴らしさの証明といえるでしょう。
映画「スティング」は、ロネガンを欺くための戦略と、FBIの策略を巧みに組み合わせることで、観客に驚きと不安を与える傑作です。主演のロバート・レッドフォードとポール・ニューマンが演じる若々しくかつ渋い魅力は、まさに娯楽映画の完成形と言えるでしょう。この作品は古典的ではありますが、いまだに色褪せることなく、観る者を虜にする魅力を持ち続けています。文句なしにおすすめの一本です。